人類の歴史の中で銃が武器の主流に躍り出る以前に、専ら殺人道具として用いられたのが刀剣でした。
その点で刀剣は銃と同様、否定的に捉えられる向きもあり、必ずしもその魅力や凄さが人口に膾炙しているとは言えません。
ただそうした刀剣の一部に美術品としての価値があることや、切れ味を高めるための刀匠の努力や技術が称賛に値することを、端から無視できる人も少ないのではないでしょうか。
武器の評価も多様であることは日本刀に限られず、欧米の刀剣（以下「ソード」）に関しても肯定派と否定派とに分かれます。
個人の意見としてどちらかに偏ることなく、刀剣を多面的に鑑賞したいものです。
また日本人のソードに対する関心と、欧米人の日本刀に対する憧憬とが、対称的な構図で議論されることも少なく、結果的に刀剣の国際比較が疎かにされているのが現状です。
しかし今後はグローバル化の時代にあって、刀剣も含めた東西文化の比較は盛んに行われ、新たな発見に資することでしょう。
上述したように日本刀とソードとの比較が十分になされてきたとは言えないのですが、現時点で得られている知見を整理することにします。
両者は近接武器としてはもちろん、儀式に用いられた点も共通しています。日本刀がご神体として祀られたことはよく知られていますし、ソードも各種儀礼に頻用されたことは常識となっています。またかなりの強度を誇った点も同じです。
日本刀は片刃で反りを有し、その形状が生み出す切れ味は西洋にも引けを取りません。西洋にも増して複雑な工程を重ねることで、しなやかでありながら丈夫な刀身を実現させました。
他方、ソードの種類は多様で目的に特化している分、各状況において抜群の破壊力を発揮しました。